今日は、寝不足で頭が回らず、話題が作れそうにないので、それを放流。
(以前に小話ついったーで流した重複部分あり)
一睡もせず夜を明かし、二度と入ることのない300号室のドアを開けた。そして一階に下り章三の部屋のドアをノックする。
やや間があり章三が顔を出した。同室者はいないらしい。
「なんだ、こんな朝早くに。葉山は?」
「………別れた」
信じられないような顔をして、章三が目を見開いた。
「ギイ、お前………!」
「頼みがある」
章三の言葉を阻み、
「託生が無事、家に入るまで見届けて欲しい」
無茶なことを言っている自覚はある。託生の家まで行き、こいつが自分の家に着く頃には深夜に近いだろう。
しかし、どこで監視されているかわからないんだ。
オレ達が別れたことを知る人間は、今のところ章三のみ。まだ恋人であると思っているであろう知らない誰かが、また託生を襲う可能性がある。
もうオレには託生を守ることすらできない。章三に頼むしかなかった。
じっと睨みつけるようにオレを見据え、
「わかった。見届けてやる」
無茶な要望に頷いてくれた相棒に、ホッと息が漏れた。
章三には何も言ってはいなかったが、勘のいいこいつは気付いているんだろう。ここ一連の事件が、オレのせいだってことに。
「もう、行くのか?」
「あぁ」
こいつとも、もう二度と会えないかもしれない。
託生だけじゃない。オレと関わった人間全員が、ターゲットになるかもしれないんだ。
「今まで、ありがとう。最高の相棒だったよ」
「馬鹿が………」
差し出した右手を、唇を噛み締めて章三が強く握った。赤くなった目には気付かない振りをしてやるよ。
「元気でな」
後ろ手にドアを閉め薄暗い廊下を歩き寮を出たとたん、痛いほど冷たい風がオレの頬を撫でていった。
まだ託生は眠っているだろうか。
振り向いて仰ぎ見た270号室の窓には、カーテンが引かれている。
東の空がようやく変わり始めた頃、バス停に着いた麓行きの始発バス。これに乗るのも最後だな。
座席に座り、走り出したバスの窓から祠堂を振り返った。鬱蒼とした木々の隙間から見える校舎が小さくなっていく。……夢が遠ざかっていく。
眠る振りをして俯いたとたん、ポツリと水滴が足を濡らした。
「託生………」
奥歯を噛み締め嗚咽を堪える。
生きていてくれるだけでいい。もう二度と会わないから、託生の命だけは狙ってくれるな。
……呆気ない夢の終わり。
ラベル:日記