咲未「初めてのホワイトデーに、なにをあげたの?」
託生「……ミンティア」
咲未「ミンティアってなに?」
託生「小さな錠剤のお菓子?薄いプラスチックの入れ物に入ってたよ」
一颯「あ!それって、このくらいのプラスチックケース?」
託生「一颯。それ、もう売ってないはずなのに、どこで見たの?」
一颯「父さんの部屋。まだ中身入ってた」
託生「入ってた?!」
一颯「うん。カラカラ音がしたし」
託生「………賞味期限過ぎてるよね」
一颯「どっぷり20年くらい……」
咲未「お母様、大丈夫だって。お父様のお腹頑丈だから」
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地響きのような音が近づいてきて、
「託生っ!」
「へ、なに……え……ぎーーいーーーー………」
目の前にいたはずのお袋の姿が一瞬の内に消え、ドアの向こうでドップラー現象のようにお袋の声と親父の靴音が遠ざかっていく。
「いったい、なんなんだ……」
「とうとう、父さん、ブチ切れた?」
「お母様不足だったのかしら?」
動じず、咲未が手元にあるミカンを一粒食べた。
「お兄様も食べる?」
「あぁ」
兄貴と二人、居間のボードの上に、大きく「みかん」と書いたダンボールを覗き込んで……。
「咲未………」
「なぁに?」
「この、みかんが届いたのって、いつだ?」
「んとね、昨日」
昨日……。たった一日で、箱の半分までなくなるものなのか?
「食べたのは、母さんと咲未なんだよな?」
「うん、そうだけど、お母様が食事代わりに食べてたから」
とたん、兄貴の顔が引きつった。
「兄さん?」
「もしかして……いや、赤でも緑でもないな……じゃあ、違うのか?……でもなぁ……」
赤?緑?なんの話だ?
ラベル:日記