お題を見て、パラレルだったらなんとかなるかなぁと、時代も背景も考えず、とりあえず書いてみただけだったので、マジに、皆さんの反応に驚いてます。
ちなみに「ギイ」の名前のお題は、「しましま模様のシャツで、照れているギイ」で、これと言って浮かびませんでした。
続きを、シリーズ化を、と、お声をかけていただいたのは嬉しいのですが、これ以上自分の首を絞めたくはないので、少しだけ続きらしきものを書いて、終わりにしたいと思います。
拍手のお返事は、そのあとに。
ありがとうございました。
【昨日の続き】
「怖くないの?」
「なにが?」
「ぼく、吸血鬼なんだけど」
「なにを今更」
PCのディスプレイから目を離さず、ギイが鼻で笑う。
今まで襲った人間たちは、誰もがぼくを恐れた。仲間にするつもりはないから記憶は消してあるけれど、もう一度会っても同じように悲鳴を上げるだろう。
それなのにギイは、恐れるどころか、ぼくがここを出ていこうとするたびに邪魔をした。
「棺桶で寝るより、ベッドの上の方が体が休めるだろ?」
「だから、そんないかにもな場所で寝るわけないだろ?偏見もいいところだ」
「それは失礼」
笑いながら、しかしあれやこれやと引き止める理由を作り、しかも毎晩、えーっと、その、人間で言うところの「襲う」行為でぼくを疲れさせ、結局のところ、ぼくは自分の住処に帰ることなく、あれからずっとここにいる。
変なヤツ。
ギイの広い背中を見ながら、深い深い溜息が零れ出た。
どうして、こんな森の奥の屋敷に一人でいるのか知らないけれど、必要なものは届けさせているし、生活に支障はないようだ。時折、こうやってPCを触ったり電話をする以外、ギイはぼくの側から離れない。
「遠慮せずに、吸ったらいいじゃないか」
「………は?」
くるりと椅子を回して、まっすぐにギイがぼくを見た。
「オレの血が欲しくて、ここに来たんだろ?」
「そ……う……だけ………ど…………」
美味しそうな匂いがしたから、ここに来たけれど………。
「託生、おいで」
呼ばれて、ゆっくりとギイに近づいた。とたん腕を取られ膝の上に座らせられる。
鼻先に芳香な匂いが漂い、くらりと眩暈を感じた。吸血鬼の本能が、頭をもたげてくる。
「ここだろ?噛めよ」
ギイが、自分の首を指差して、ぼくを促した。
この白い皮膚の下に流れている赤い鮮血。近づいただけで、これだけ美味しそうな匂いがするのだから、さぞかし甘くて極上の味がするのだろう。
「ほら、託生………」
抱きしめるようにギイがぼくの頭を、自分の首に押し付ける。
しかし、ギイの肌に口唇が触れたとたん、目が覚めるようにハッとして口唇を離した。
「託生?」
「………できない」
なぜだかわからないけれど、ギイの肌に傷をつけたくない。この綺麗な肌に、消えることのない傷跡を残したくない。
「オレの血を吸って、お前の血をオレに流し込めば、オレはお前の仲間になれるんだろ?」
「え?」
仲間………?
「託生と、ずっと一緒に生きていける」
「………嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だっ!!」
「どうして?!」
「ギイには、普通の人間でいてほしい」
限りある命の中で、生きていってほしい。ギイをこんな化け物の仲間にしちゃいけない。
「オレは、お前と一緒に生きていきたい」
「ダメだよ。こっちに来ちゃダメだよ、ギイ」
「託生とずっといれるなら、オレは永遠の命が欲しい」
「ギイ………」
どれだけ魅力的な言葉なんだろう。
死を知らず、彷徨い続けるには一人は寂しくて、でも、一緒にギイがいてくれるなら、そんな永遠の時間を過ごすのもいいかなと思うけど、
「………無理だよ。ぼくには、できない」
この人には、太陽の下で生きてほしい。
「なぁ、託生」
「うん?」
「オレは、お前を愛してるんだ」
「え………?」
「愛してるって、わかるか?」
「………ごめん。よく、わからない」
ぼくが人間でいたのは、遥か昔のことなんだ。仲間にした兄さんも、もう消えた。
人間の感情がどういうものか、ぼくは、もうとっくに忘れている。
「オレは、託生とずっと一緒にいたい。寂しい思いなんてさせたくない。なにより、これから先、オレの知らない時間を、託生に過ごしてほしくない」
「ギイ………」
真剣な瞳に、ギイの本気が伝わってくる。
愛しそうにぼくの頬に大きな手を滑らせ、口唇が重なる。忍び込んだギイの舌が、とがった二つの牙を、くすぐるように撫でた。
どうして、ここに来てしまったんだろう。雨の匂いに消されることなく、ぼくを導いたギイの香りが、あのときよりも濃厚にぼくを包み込んでいく。
明日、ギイの記憶を消して、出ていこう。
ギイの体を受け止め、ぐにゃりと輪郭をなくしたぼくの中に、たったひとつ浮かんだ真実だった。
《拍手のお返事》
>エスエヌさま
訂正しました。ありがとうございまーす♪
世界観もなにも、そんな難しいこと考えておりません;
単純に、お題を見て浮かんだのを書いただけなんです~。
それこそ吸血鬼って、永遠に生きているから終わりがない。終わりがあるとすれば、杭で心臓を打たれるバッドエンドのような気がするので、やっぱりシリーズ化は無理そうです。
小話は、あるかもしれませんが、今のところはわからないです;はい;
拍手、ありがとうございました♪
>海さま
なぜか、皆さん、託生くんが吸血鬼というところに食いつかれてますね(笑)
おおや先生が、ギイが吸血鬼のシチュでイラストを描かれているので、その印象が強いのでしょうか。
でも、託生くんだと、ドジっ子にしか見えませんけどね;
腕力ないし、実際、捕まっちゃってるし、襲われちゃってるし。
続きはこういう感じで。
拍手、ありがとうございました。
ラベル:BL